■相続手続は、相続人の一人でも協力しないと大変なことになります!
相続手続において、厄介となるのは、相続人が相続に協力してくれないケースです。
具体的には、相続人調査で確認し、相続人全員が遺産分割に合意できて、はじめて遺産分割協議書に署名捺印していただく段取りです。
しかし、その中に非協力的な相続人がいると、遺産分割の話し合いさえできない状態となり、相続手続が進めることができず、ストップしたままとなってしまいます。
なぜ協力しようとしないのでしょうか?
それは、相続人にもそれぞれ事情があるわけです。
私見で分析する限り、その理由は以下のとおりです。
1.遺産分割の提案に納得できない
経済的な事情もあり、少しでも多く財産を獲ろうと企む方もいます。
簡単に納得してもらえませんが、話がまとまれば、一気に進展することもあります。
相続人の配偶者が出てくると、なおさら厄介となります。
2.相続人同士が不仲
元々仲が悪いうえに、遺産分割協議をやろうとしてもまとまらないのも事実です。
当事者間での話し合いが難しいですが、いかに妥協点を見つけるか、折り合えるかが鍵ですね。
3.相続人自身の事情
経済的な問題や家庭内の問題、病気あるいはその他の他人には言えない事情を抱えている等、他の相続人とは関わりたくないケース。
そういう方には、秘密厳守することを前提に進めることもあり得ます。
このように、遺産分割協議が難しいケースもありますが、それでも手続まで進めることができたケースもあります。
難しいケースですが、相続の専門家に相談してみると、案外うまくいくこともあります。
ただし、それでもどうしても難しい場合は、裁判で決着を図るしかありません。
そのケースでは、遺産分割協議に協力しない相続人以外の相続人全員が、その協議に参加しない相続人を相手方として、家庭裁判所に調停の申し立てをします。
申し立てる家庭裁判所は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
調停委員会は、申立人、相手方の両方から順次、遺産の範囲、遺産分割の方法、特別受益の有無といった点について主張を聞き、双方に譲歩を求め、できる限り、話し合いによる合意を目指します。
合意に至らないとき、あるいは相手方が調停の呼び出しに応じない場合は、調停は不成立となり、審判手続に移行します。
審判手続では、遺産分割調停とは異なり、当事者の合意ではなく、裁判官により、遺産の内容や相続人の年齢、職業、生活状況などのすべての事情を考慮した上で、強制的に遺産分割内容を決定します。
また、この他に「遺産に関する紛争調整調停」という申立もあります。
この調停は、相続人の間で相続財産の有無や範囲、権利関係等に争いがある場合に、当事者間での話合いがまとまらないときや話合いができないときには、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。
相続人の一人だけがどうしても話し合いができないときには、この調停を申し立てるのことも選択肢となります。
ただし、紛争の内容が相続人全員に及ぶ場合や相続人全員を手続に参加させる必要があるときは、遺産分割事件として申立てをすることが必要な場合があります。
※遺産分割協議とは参照