相続よろず相談所

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは

目次

1.遺産分割とは

相続の開始により、共同相続人の所有に属した財産を、各相続人に分配する行為をいいます。相続の根本の部分であり、遺産分割でもめると、相続が争族となりますので、相続で最も重要なところです。

2.協議分割

相続人が2人以上いる場合に相続人全員で話し合った結果、どのように財産を分配するかを決めることを協議分割といいます。

協議の内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・実印を押印します。 (3ヶ月以内の印鑑登録証明書添付)

遺産分割の方法(Q&A)

Q1)遺産分割協議のやり方はどういう決まりがあるのですか?

A1)遺産分割協議のやり方は特別の決まりがあるわけではありません。

Q2)遺産分割協議では、相続人が全員同意しなければいけないのですか?

A2)相続人全員が同意することが必要条件です。

Q3)遺産分割での分け方は、全員平等でないといけないのですか?

A3)分割内容は平等でなくて構いません。自由に分割できます。遺言がある場合、相続人全員の同意がある場合は、遺言と異なる内容の分割をすることも可能です。

Q4)相続人が全国各地に全員集まることができません。どうしたらよいのですか?

A4)相続人が多く、全国にいて一堂に会して協議できない場合は、遺産分割に代えて「相続分のないことの証明書」を添付すると、その相続人抜きで遺産分割協議ができます。

Q5)相続人の中に未成年の者がいます。どうしたらよいのですか?

A5)相続人が未成年のときは、家庭裁判所に対し特別代理人選任申立の手続を行う必要があります。特別代理人は、相続人以外の親族がなります。

相続人に未成年者や認知症の方がいる場合の手続とは参照

Q6)相続人の中に認知症で判断ができない者がいます。どうしたらよいのですか?

A6)相続人の中に、認知症や植物状態など自らの判断では遺産分割協議に参加できない場合は、成年後見制度(法定後見制度)を活用して、選任された後見人・保佐人・補助人が相続人の代わりに遺産分割協議に参加します。

成年後見人も相続人である場合は、後見監督人が選任されていれば、後見監督人が遺産分割協議に参加します。選任されていない場合は、成年後見人は家庭裁判所に対して、「特別後見人の選任」を申し立てる必要があります。

相続人に未成年者や認知症の方がいる場合の手続とは参照

Q7)相続人の中に海外に在住の者がいます。どうしたらよいのですか?

A7)相続人の中に、海外で生活している者がいるときは、日本に住民登録がないため、住民票や印鑑証明書を取ることができません。そこで、住民票の代わりとして、外国における現住所を証明する在留証明書を在外公館(日本大使館、総領事館)へ発給申請します。

また、日本に居住している場合、相続人は印鑑証明書が必要ですが、海外に居住している場合は、それに代わるものが署名(サイン)証明書です。

順番としては、遺産分割協議書を作成し、それを海外の相続人へ送付します。

相続人がサインした遺産分割協議書を領事館へ持って行き、本人のサインの証明をしてもらうようにします。そのあとに海外在住の相続人が署名します。

預貯金の解約等で必要になる金融機関用のサイン証明は、有効期間は3ヶ月以内となっています。

サイン証明書と在留証明書とは参照

Q8)相続人の中に行方不明者がいます。どうしたらよいのですか?

A8)相続人の中に行方不明の者がいる場合は、不在者財産管理人選任の申立という手続を行います。家庭裁判所に対して不在者の代理として財産管理人の選任を求めます。財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加します。この協議で合意した遺産分割協議書は家庭裁判所の許可が必要となります。手続は約2~4ヶ月程かかります。

相続人に住所不明や行方不明者がいる場合の手続とは参照

相続人調査サービスのページをご参考に。

Q9)被相続人から生前に住宅資金をもらっています。それは考慮されるのですか?

A9)被相続人から生前に結婚資金や住宅資金などの財産の特別な利益を受けている者(特別受益者)がいる時は、その分を考慮して相続分を決めます。

特別受益の対象となる贈与は、結婚、養子縁組のときの持参金・支度金、独立開業資金などの援助、多額の学費、住宅購入資金など。

特別受益分を相続財産の前渡しとみなし、特別受益者の相続分から差し引きます。これを「特別受益者の持ち戻し」といいます。相続分から特別受益分を差し引いた結果、他の相続人の遺留分を侵害している場合は、遺留分権利者から侵害分の減殺請求があれば応じなければなりません。

ただし、特別受益者以外の相続人全員が遺産の分割に際して、「特別受益分は考慮しない」と認めた場合は、財産に含めなくてもかまいません。

Q10)生前に受けた贈与の評価は、受けた時点での価格でしょうか?

A10)特別受益者が受けた贈与は、受けた時点での価格でなく、相続開始時の評価額に換算されます。また、特別受益者が贈与された財産を減少あるいは滅失したとしても贈与開始時のままあるものとして計算されます。

Q11)亡父の事業を無報酬で手伝ってきましたが、他の相続人より多くもらえますか?

A11)被相続人の生前に財産の維持や増加に貢献(家業の手伝いや介護など)した法定相続人は、貢献の程度に相当する額(寄与分)を相続分に加算できます。

寄与分が認められるのは、被相続人の事業に関する労務の提供または財産の給付、被相続人の療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加につき特別に寄与をした共同相続人です。

被相続人と同居して、世話をしてきても、親子であれば、扶養の義務があるため、寄与分は認められません。

寄与分は相続人同士の協議で認めるのか決めます。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に請求して決定してもらいます。

寄与分は相続人でない者には適用されませんが、相続人に代わってその妻等の相続人でない者が被相続人の療養看護や労務の提供により、被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与をした場合は「特別寄与料」の請求ができるようになりました。

Q12)相続財産の中に未登記の家屋があります。どうすればいいのですか?

A12)相続財産に未登記の家屋がある場合、市役所等の固定資産税課に、未登記の家屋を相続した人が未登記の物件を相続した旨を届出を行う事によって、それ以降は相続人の名義で納付書が送付されるようになります。

Q13)相続財産の土地に抵当権が設定されています。どうすればいいのですか?

A13)抵当権が設定された不動産は、被相続人が亡くなっても抵当権は消滅せず、もし相続後にその負債を返済できない場合は、抵当権が実行され、土地・建物が競売にかけられることになります。被相続人が土地・建物を担保に提供していただけの場合は、その不動産だけは失うことになりますが、それ以上の責任は問われません。

これに対して、被相続人が連帯保証もしていた場合、連帯保証人としての責任は、相続人に相続されることになりますから、支払いの請求に応じなければなりません。そして、債務の返済が抵当権のついた不動産だけで不足するときには、支払いの請求が連帯保証人の一般財産にも及ぶ可能性があります。

死亡した人の財産を相続するかどうかは、相続人が選択することができるため、相続放棄することを検討してもよろしいのではないでしょうか。

Q14)抵当権抹消の際に、抵当権者が死亡している場合はどうすればいいのですか?

A14)抵当権が設定された不動産で、抵当権を抹消する際にすでに抵当権者が亡くなっている場合は、抵当権者の相続を行う必要があります。(抵当権移転)

Q15)相続財産の中に借入金があります。全員で引き受けないといけないのですか?

A15)住宅ローンや借入金などの債務は相続により共同相続人が遺産分割で実際にもらえる割合に関係なく、法定相続分に従って分割されて承継することになるものです。しかし、相続人同士の協議で一人が債務を引き受けるという合意をすることも可能です。ただし、この合意を債権者に対抗するためには、債権者の承諾が必要です。

また、連帯保証債務は、一定限度額が確定している場合、その額が相続の対象です。限度額や期間が定められていない場合は、相続開始時点で、金額が確定した分の債務が相続対象になります。

Q16)祭祀財産は相続財産ではないのですか?

A16)祭祀承継について、「法事とか諸費用がかかるから、財産を多くしてほしい」と請求する場合があります。しかし、祭祀財産(お墓や仏壇など)を承継したからといって、他の相続人よりも相続財産を多くもらえる権利を有するものではなく、また祭祀費用の請求権もありません。祭祀財産は、相続財産に含まれません。民法上、お墓の承継については、「慣習に従って祖先の祭祀を承継する人がこれを承継する」とあります。必ずしも親族が承継しなければならないわけではありません。他人でも構わないのです。

Q17)葬式費用の支払は、誰が負担しなければいけないのですか?

A17)葬式費用について、原則的に負担の義務を負うのは、喪主以下の相続人です。一時的に喪主が立替えて支払い、後で相続人間の協議で、負担の割合を決めます。つまり、喪主が全額支払うのも、均等に分担するのも自由です。

もちろん、遺産分割協議の際に、決めてもよいのです。そこで、均等に負担することに決めたのなら、相続財産から葬式費用を控除しても、別に問題はありません。

Q18)香典は相続財産ではないのですか?

A18)香典も葬式費用と同様に、相続財産ではありません。原則的には、喪主に帰属します。ただし、喪主の意思により全額葬式費用に充当してもよく、またその一部を充当することでもいいわけです。

Q19)生命保険金は相続財産ではないのですか?

A19)生命保険に関し、受取人の指定のある死亡保険金は、被相続人の財産ではなく、受取人固有の財産となります。したがって、遺産分割の対象とはなりません。ただし、受取人の指定を被相続人としている場合や受取人を指定していなかった場合は、相続人の共有財産と考えられ、遺産分割協議の対象となります。

Q20)死亡退職金は相続財産ではないのですか?

A20)死亡退職金も、被相続人の財産ではなく、受取人固有の財産となります。したがって、遺産分割の対象とはなりません。

Q21)遺産分割協議の終了後に遺言が見つかりました。その遺言はどうなるのですか?

A21)遺産分割後に遺言を発見した場合は、その遺言は無効となります。

Q22)遺産分割協議のやり直しはできますか?

A22)遺産分割協議は一度成立すると、原則として相続人全員の合意がなければやり直しはできません。相続人全員の合意がなくてもやり直しができるのは、遺産分割協議そのものが無効の場合など、ごく一部の場合に限られます。

相続人全員の合意があればやり直しはできるのですが、例えばAが全部相続することになったのに、やり直してBが全部相続するというように変更した場合、これは税務上はAからBへの贈与とみなされて、Bが贈与税を支払わなくてはならないことになります。遺産分割協議のやり直しはいろいろと困難が生じますので、ご注意してください。

通常、遺産分割協議を終えて遺産分割協議書を整えるまでは、すべての遺産は相続人の共同所有となります。共有財産は相続人の代表が管理しますが、財産の処分などは相続人全員の了解を得ない限り何もできません。

つまり、分割協議でもめていると、売却や家屋の建築もできず、延納・物納の申請もできなくなり、相続税の控除(小規模宅地の減額、配偶者の税額軽減)も使えなくなるなどデメリットだらけです。

具体的な分け方

1)現物分割

現物分割とは、「土地と家屋は長男に、預貯金は次男に」など、個々の財産を各相続人に割り振る方法のことです。

不動産、それも自宅がほとんどを占める場合は、公平に分けることが困難です。

2)換価分割

換価分割とは、遺産が土地や家屋などの不動産で、分割できない場合や各相続人に現物で分けるほどの種類がない場合、遺産を売却して、その代金を分割する方法のことです。

売却においては、時期・価格・費用負担など相続人全員の合意が必要となりますので、労力を要します。

3)代償分割

代償分割とは、後継者となる相続人が単独で相続し、他の相続人の相続分を自分の財産から金銭などで支払う方法のことです。

料亭、工場、病院などの個人事業や農地などは均分相続になじみません。無理に分割すれば経営が破綻してしまうことも多いです。また、農地も狭い農地を細分化しては経営が成り立たなくなります。

代償金を支払うことを遺産分割協議書に記載しておかないと贈与税の対象になってしまいますので、遺産分割協議書への記載が必要です。代償金を支払わない場合は、支払わない者に対して支払いを求める訴訟を提起したり、調停を申し立てることができます。

4)共有分割

共有分割とは、遺産の全部または一部を相続人全員または一部の共有として分配する方法のことです。

売却・建て替え・増改築等の際に共有者全員の合意が必要となります。

4つの遺産分割方法

分割方法
現物分割
換価分割
代償分割
共有分割
内 容
個々の財産を1つずつ分配する 遺産を売却して、その代金を分割する 相続分の差額を対価で支払う 各相続人で共有する
注意点
公平に分けることが困難 不動産を譲渡するため、税金や経費がかかる 代償金を支払うため、まとまった資金が必要 財産の使用や処分でもめる可能性有

 

3.調停分割

遺産分割協議が整わない、あるいは協議することができない場合に、調停により分割する方法を調停分割といいます。

まず、相続人は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てします。(調停前置主義)

非公開の場で家事審判官と調停委員2名の立ち会いのもとに、相続人が集まって話し合いを行い、合意と譲歩をめざします。

家事審判官と調停委員はアドバイスはしてくれますが、結論は当事者が決定して、調停が成立します。審判とは異なり、法定相続分に拘束されません。

調停分割が成立すると、遺産分割協議書に代わる「調停証書」が作成されます。

4.審判分割

遺産分割協議が当事者間でまとまらないため、調停が不成立の場合に、家庭裁判所の審判により分割いたします。裁判所が事実と証拠調べを行い、家事審判官によって分割が命じられます。この分割を審判分割といいます。

審判分割の場合、裁判官は法定相続分に拘束され、全共同相続人の合意がない限り、相続分に反する分割はできません。

つまり、審判分割は、法定相続分で分割されるという結果になるということです。

5.分割禁止

1)遺言による分割禁止

被相続人は、遺言により遺産の全部または一部について、相続開始の時から5年を超えない範囲で分割を禁止できます。

2)協議による分割禁止

5年の範囲内なら、共同相続人の合意で分割を禁止することができます。

3)審判による分割禁止

家庭裁判所は特別の事由(相続人に争いがあるなど)があるときは、期間を定めて分割を禁止することができます。