遺言

遺言を踏みにじる相続人とは

■遺言者の想いをないがしろにするような行為をする愚かな相続人もいるのです!

遺言を作成する人は年々増加していますが、まだまだ少ないのが現状です。

以前、遺言の作成を依頼された方から、久しぶりに連絡をもらいました。

この方は、60代の独身男性です。

厳格な父親の下で、育ちました。

おとなしい性格で母親がかばう形で、暮らしてきたようですが、生涯独身のまま、仕事もリタイアしています。

父親はすでに亡くなっており、母親と二人暮らしでした。

その母親が遺言を作成したいということの相談に乗りました。

母親曰く、この男性の姉が遠方の自営業の方に嫁いだのですが、長い休みになると、自宅に押し掛けられ、お金を貸してほしいといつもせがまれて迷惑しているとのことでした。

そのため、自分が亡くなった後、相続で兄弟二人で争いになるのを危惧したため、全財産を同居のこの男性にあげるという内容の遺言を作成してほしいということでした。

必要書類の準備をして、無事に公正証書遺言の作成手続は完了しました。

それから数年して、この男性から連絡が来たわけです。

母が危篤になったそうですが、遺言の内容のとおり、手続しなければならないのか相談してきました。

聞くところによると、遺言の内容だと、自分の取り分が多すぎるので、姉と折半したいができないのかとのことでした。

当方は、「相続人全員の合意があれば、遺言の内容を無視して遺産分割協議を行うこともできる」とお話ししました。

せっかく母親が息子への想いを大切にして遺言書を作成したつもりだったにもかかわらず、この息子は、その想いを尊重していないどころか台無しにしようという気持ちが伝わりました。

仲良く暮らしていたはずですが、この男性は、どうも能天気なようで、自分自身の今後のことも何も考えていない様子でした。

結果的には、遺言を無視して、姉と遺産分割協議を行ったわけです。

したたかな姉と能天気なこの男性とでは、やはり一枚も二枚も姉が上手でした。

遺産分割は折半というわけにはいかず、姉の方が多くの財産を相続しました。

結果が見えていただけに、何とも言えない状況でしたが、これでは、何のために母親が遺言を作成したのかわかりません。

この男性が行った行為は親不孝であると思いますが、当の本人が納得しているのであれば、それは致し方ありません。

欲がないのも結構ですが、もっと自分自身のことや将来のことも考えて行動してほしかったです。

当方のアドバイスには耳も傾けてもらえず、残念でしたが、今頃、母親はどのように思っているのでしょうか?

「このバカ息子!」とあの世で怒っていることでしょうね。

親不孝なことをしていると、今度は自分自身に返ってきます。

この男性は、自分自身の老後や病気や介護が必要になったときにどうするのか、財産を誰にあげるのか、終活全般のことを何も考えていませんし、人付き合いもないので、孤独死のリスクが高いです。

なんともやりきれない内容でした。

暴力を振るう娘への対処法とは

■手をこまねく子がいる人は、ひとりで抱え込まず、相談してください!

先日、電話相談にて、介護と家族の暴力で悩む方より、ご相談をいただきました。

夫がくも膜下出血で倒れ、介護をしている70代のご婦人からです。

その40代の娘さんが、以前は、都内で1人暮らしをしていたのですが、退職され、家に戻ってから、現在は、仕事もせずに、自宅で引きこもり状態。

その娘さんが相談者に対して、暴力を振るうので、困っているとのことです。

父親が要介護の状態で、相談者が面倒を見ているのに、このような行為を行うのはなぜか?

やはり、娘さんも仕事がうまくいかず、退職し、再就職もままならず、相当なストレスがたまっているようです。

ましてや、結婚もせずに、適齢期を過ぎようとしている状態では、八方塞なわけですから。

話し合いをしても、うまくいかないようです。

このようなご相談でした。

ちなみに相談者はすでに遺言を遺しているそうですが、今回の件で、この娘には財産を与えたくないとのことです。

このような親に対する著しい虐待があった場合は、「相続人排除」となり、相続人の資格を奪われます。

相続人の排除の請求は、遺言でもできます。

ただし、相続人の廃除は、相続人資格の剥奪ですから、家庭裁判所も簡単には認めてくれませんので、その点は、ご注意ください。

自筆証書遺言の作成にこだわる相談者とは

■自筆証書遺言を作成するときに気を付けないといけないこととは

先日、メールで遺言を作成したいという方からご相談がありました。

現在、末期がんで自宅で療養中で外出は難しいとのことで、独身であり、近くに親類もいないため、遠方にいる甥に全財産である預金をあげたいという内容でした。

メールでやり取りした結果、依頼を受けることになり、遺言の内容の詳細を確認したり、必要書類の収集に取り組みはじめました。

当方としては、公正証書遺言の作成で依頼を受けたのですが、なぜか相談者が突然、自筆証書遺言の作成でお願いしたいと言い始めました。

書類の収集に時間がかかりそうなため、公正証書遺言を作成するまでの繋ぎ役として、自筆証書遺言を作成するのでしたら、よろしいかと思いますと回答しました。

しかし、相談者はどうしても自筆証書遺言の作成で進めてほしいといい、自筆証書遺言のひな型まで送ってくる有様でした。

法改正で自筆証書遺言の作成に関して、メリットが生じたことから、今後、自筆証書遺言を作成する方が増えることが想定されます。

確かに自筆証書遺言ならば、費用も掛からず簡単に作成できますし、証人もいりませんから、手っ取り早く作成したいときには、いいかもしれません。

しかしながら、自筆証書遺言の場合、デメリットも多いです。

まず、遺言書が見つからないこともよくあります。

特にひとり暮らしをしている方の場合、遺言の存在そのものが不明なため、遺族も探すことなく、相続手続を進めてしまうケースも多いです。

さらに型式が不備なことが多いです。

自分勝手な型式だったり、書き方が誤っていれば、遺言書としては無効となってしまいます。

特に今回の相談者の場合、財産をあげたいという対象の甥とは、ほとんど交流がないため、名前もうろ覚えでした。

甥の名前が違うまま作成しても無効ですから、その調査も含めてから進めるべきでした。

また、自筆証書遺言においては、裁判所での検認手続が必要です。

検認手続を行えば、相続財産をあげる予定のない相続人にも裁判所から通知が届くことになり、結果的に迷惑をかけることにもなりかねません。

法改正で法務局が自筆証書遺言を保管するサービスが2020年7月10日より始まりました。

これなら、法務局のチェックも入るので安心かと思いきや、法務局は簡単な型式確認はしますが、内容の審査そのものを行うわけではありません。

ただし、家庭裁判所による検認の手続が不要となります。

これは、今まで大きな負担であった検認手続がなくなったので、自筆証書遺言を作成後に法務局へ保管する方が増えると思います。

ただし、保管するためには、遺言作成者本人が法務局へ行かなければなりません。

病気や障害等により、外出が困難な方は、法務局へ保管することができなくなりますので、注意が必要です。

ちなみに今回の相談者の方も外出は難しい方ですので、自筆証書遺言を作成しても検認の手続が必要です。

その手続の負担等もまったく考慮せず、やみくもに自筆証書遺言の作成を進めようとするので、今回、残念ながら当職は手を引きました。

メールだけのやり取りでは、うまく意思疎通ができなかった面もありました。

末期がんであるために焦る気持ちは理解できますが、当初の条件を変えてしまうやり方には、やはり、納得がいきませんでした。

結局のところ、この方は自筆証書遺言を作成したものの、その後の手続がどうなるのかがよく理解できていないままです。

遺言を作成することのみばかりを優先してしまい、その内容が確実に実行されるようにすることに関しては、頭に入っていませんでした。

この相談者のように、自筆証書遺言の作成にこだわることに、メリットはありません。

まだ時間に余裕があるのであれば、公正証書遺言にしておくべきでした。

遺言を作成することを検討中の方は、ぜひとも公正証書遺言で作成することにこだわっていただきたいと思います。

自筆証書遺言の財産目録作成とは

■自筆証書遺言で新たに負担軽減となって財産目録の作成とは

先日、自筆証書遺言の財産目録に関するご相談をいただきました。

以前に作成した自筆証書遺言に代わって、新たに作成しなおしたいとのことでした。

相続に関する法改正が2019年1月13日から施行され、自筆証書遺言の方式が改正されました。

今までの方式が緩和されました。

特に変わったのは、財産の記入に関する点です。

今までは全文を自筆で書かなければなりませんでした。

この形式だと、遺言者の負担も大きく、なおかつ、形式不備のため、無効となるケースもたくさんありました。

そこで、自筆証書遺言の作成に関して、改正が必要であると判断されました。

法改正により、相続財産に関して財産目録を添付する場合は、その財産目録に関する記入は自筆でなくても大丈夫となりました。

財産目録に関しては、パソコンやワープロで作成がOKとなったわけです。

パソコンで作成するのは、もちろん本人が原則ですが、現実的には、家族や親族などの他者が作成することもあり得ます。

専門家に依頼するという方法もあります。

ただし、パソコンで作成した財産目録の各ページには、遺言者本人の署名と押印が必要です。

これで、本人が財産内容を把握しているということになります。

パソコンで財産目録を作成する以外にも、不動産なら登記事項証明書(登記簿謄本)、預金なら通帳のコピーを添付する方法もあります。

この法改正により、自筆証書遺言の作成に関する利便性が増した感はあります。

また、もう一つ大きな改正があります。

2020年7月10日より、自筆証書遺言を最寄りの法務局で、有料で保管してくれるサービスが始まります。

法務局が保管してくれることにより、今まであった紛失や改ざんされることがなくなります。

さらに法務局が自筆証書遺言を補完する際に、遺言書の形式をチェックするので、形式不備による無効の恐れもなくなります。

また法務局で保管する場合は、家庭裁判所での検認も不要となります。

上記の結果、自筆証書遺言を作成する方が増える可能性はあります。

まず手軽に遺言作成をするには、自筆証書遺言からとなります。

しかしながら、やはり安全で確実な遺言を作成したい方は、公正証書遺言を作成すべきであるということは、これまでと変わりません。

したがって、今回の法改正によっても、自筆証書遺言の作成はあまりお勧めいたしません。

遺言執行者の選任とは

■せっかく遺言を作成するなら、遺言執行者を決めておかないと片手落ちですよ!

終活がブームになって久しいですが、その効果が出てきて、遺言を作成する方が少しずつ増えています。

遺言を作成する際は、自筆証書か公正証書で作成するケースが大半です。

実務的には公正証書で作成するケースが多いわけですが、自筆証書で作成されるケースと専門家を入れずに公正証書で作成する際に見受けられる遺言で最も残念なのは、遺言執行者を指定していないことです。

遺言執行者が指定されていなくても、遺言としては成立していますが、これでは、重要なことが記載されていないので、遺言書としては、いかがなものかと思います。

遺言執行者は、遺言の内容を実行する人のことです。

ですから、せっかく遺言を作成してもその実行する人が決まっていないと遺族は困るわけです。

また、遺言執行者がせっかく指定されていたにも関わらず、遺言執行者が亡くなってしまったときも遺言執行者が不在な状況となります。

でも、心配いりません。

遺言執行者が指定されていなくても、あとからでも遺言執行者を選任することはできます。

この場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立を行います。

申立を行うことができるのは、相続人あるいは遺贈を受ける者です。

申し立てに必要な書類は、

・遺言者の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・遺言執行者候補者の住民票又は戸籍附票

・遺言書の写し又は遺言書の検認調書謄本の写し

・利害関係を証する資料(親族の場合は戸籍謄本等)

以上となります。

遺言執行者の選任の申立を行う手間を考慮するならば、遺言作成時に遺言執行者を指定しておくことが、賢明であるといえます。

ですから、遺言作成時には、遺言執行者を指定しておきましょう。

遺言執行者は、相続人や親族でも構いませんが、手続を行うことができる方でないと遺言執行者を辞任するケースもありますので、できれば、行政書士や司法書士等の専門家を指定することが望ましいです。

当職も遺言執行者の就任を行いますので、ご相談ください。