相続手続

遺産を持ち逃げした相続人とは

■遺産を持ち逃げすると、あとで大きなしっぺ返しを食らいますのでご注意!

相続手続を行う中で、やはり重要な要素となるのは、相続人です。

相続人次第で、相続手続がスムーズにいくことは、よくあります。

しかしながら、相続人の中には、稀に世間の常識とかけ離れた意識を持つ人がいます。

そのような人物が出てくると、トラブルになるケースが大半です。

当方が経験したケースでは、母親の相続で、相続人の二男が遺産である現金と通帳を勝手に持って行ったことがありました。

この二男は、昔から強欲で自分勝手な人間であると他の相続人から聞きました。

相続人の長男は、持ち逃げされたその事実を知りませんでした。

もう一人の相続人である二男の姉である長女は、その事実を把握していましたが、兄弟姉妹間の問題であるため、特に争いまでには発展しませんでした。

ただし、その事実を知っている以上、二男は長女に対して、何も言えませんでした。

被相続人の母親が亡くなる前は、自宅は父親名義でした。

父親の相続時には、同居する長男の名義にすることに対して、次男も何も言わず、遺産分割協議書にサインしていました。

ですから、不動産をもらうことは、その時点ではできなかったこともあり、実家の現金と預金を密かに狙っていたわけです。

しかも、その二男の娘も絡んできました。

その娘は、親族には内緒で水商売を行っていました。

いわゆるホステスです。

当方は、水商売に対して一切の偏見もありませんが、やはり世間一般の常識から外れている者が多いのも事実です。

この二男の娘も父親勝りの強欲で自分勝手な人間でした。

父親を陰で操っているのがわかりました。

ですから、遺産分割協議を通さず、勝手に現金並びに預金通帳を持ち出し、預金を引き出すことに協力してしまいました。

本来なら争いになってもおかしくはありません。

しかし、長女が争いに持ち込まなかったから、その時点では、大きな問題は起こりませんでした。

ただし、後日、長女が亡くなったと聞きました。

その後、またこの二男とその娘は、長男の住む土地と家屋がどうしても欲しくて、長男に色々な手法で接近してきました。

しかしながら、長男には、保佐人が付いているため、保佐人が機転を利かせて、次男とその娘との連絡手段を一切断ち切り、遺産争いの火種を消化しました。

その後、二男とその娘は、何も言ってこれなくなったばかりか、長男の住む家にも来ることも出来なくなりました。

要するに実家との縁が切れてしまったわけです。

上記のケースでは、争いにはなりませんでしたけど、大きな代償を支払う結果となりました。

もしも遺産を持ち逃げされて、争いになったときにはどうすればいいのでしょうか。

1.預金の場合

預金口座をロック(凍結)するのが先決です。

亡くなった時点では、銀行の口座は、ロックされていないので、暗証番号がわかれば引き出し可能です。

ですから、金融機関に相続が発生した旨を連絡すれば、口座がロックされて、相続手続が完了するまでは勝手に引き出すことはできなくなります。

また同時に取引履歴を確認してください。

無断で引き出しを行ったかどうかがわかります。

なお、争いに持ち込む場合は、窃盗や横領で弁護士に依頼をして、不当利得返還請求の訴訟提起をすることもできます。

2.不動産の場合

家に勝手に入り込み占拠してしまうケースでは、必ずしも出て行ってもらうことができるわけではありません。

遺産分割協議でまとまれば、その分け方のとおりにしてください。

遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立ててください。

3.有価証券の場合

株券を持ち出しても、名義が違う以上、売却して現金化することはできません。

ですから、株券を持ち逃げされても、手続はできます。

4.自動車の場合

普通自動車の場合は、名義を変更するためには、相続手続が必要となります。

ただし、遺産分割協議書に実印を押印しなければなりません。

他の相続人から実印をもらうことが出来ないため、手続はできませんが、相続しない相続人に関しては、印鑑証明書の添付を求められていないため、不正な行為を行う可能性はあります。

軽自動車の場合は、印鑑証明書も不要なため、車検証があれば、手続はできてしまいます。

オートバイも軽自動車と同様です。

親族間での遺産の持ち逃げは、よくあるケースです。

刑事上は、親族間の窃盗や横領は刑を免除することになっています。

ですから、そのことを承知の上で、持ち逃げする輩も出てくるわけです。

でもそれを行うと痛いしっぺ返しが必ず来ます。

親族間の縁が切れますし、二度と実家に来ることすらできなくなります。

相続が発生すると、欲に目がくらみ、それまでとは態度を変えてくる相続人がいます。

相続が発生したら、誰が遺産を管理しておくのかも決めておいた方がいいこともあります。

生前から遺産を把握しておき、管理しておくことが望まれます。

配偶者居住権とは

■民法の大改正で創設された新たな制度とは

新聞やニュース等でご存知の方も多いかと思いますが、相続が大きく変わりました。

2019年の民法の改正によるものです。

今回の大改正の中でも目玉といわれているのが、「配偶者居住権」の創設です。

配偶者居住権とは、配偶者が亡くなった後でも、住み慣れた自宅にそのまま住み続けることができる権利です。

この配偶者居住権の創設前は、残された配偶者が遺産分割時に自宅の土地や家屋を相続したが、現金や預貯金が手元に残らないケースも多くありました。

自宅を相続してもお金が残らなければ、生活に困ってしまいます。

そこで、配偶者居住権が創設されたことで、自宅に住みながら、遺産分割時に現金や預貯金も受け取る権利も発生します。

具体的な例としては、夫が亡くなり、相続人は妻、長男、長女の3人とします。

相続財産は、自宅が5000万円、預貯金が3000万円、合計8000万円とします。

法定相続分どおりに分ける場合、妻は、2分の1の4000万円、長男、長女はいずれも4分の1の2000万円を相続することになります。

長男と長女に2000万円ずつ合計4000万円を渡すためには、預貯金が足りませんので、妻は自宅を売却して現金化してから、残りの金額を渡すこととなります。

この場合、妻は自宅を離れざるを得ない状況となります。

高齢であれば、住み慣れた自宅を離れることは精神的にも肉体的にも大きな負担をかけることとなります。

なお、配偶者居住権が発生するのは、相続開始時に、その家に住んでいることが絶対条件です。

被相続人が配偶者が住んでいる家とは別に家を所有している場合は、その家には居住権は発生しません。

また、賃貸物件として第三者に貸していた場合も、居住権は発生しません。

さらに配偶者居住権は、譲渡することはできません。

相続発生後、配偶者がその家に住み続けた後、介護施設に入所したため、その家に住まなくなったとしても、居住権そのものはなくなりません。

そのため、自宅を売却するためには、所有権を持つ長男と長女が売却し、配偶者は居住権を放棄する必要があります。

また、配偶者居住権は登記されるので、長男と長女が家を売却しても配偶者は居住権を失うことはありません。

そのため、第三者が配偶者居住権がある家を購入する可能性は、ほとんどありませんので、買い手がみつからなくなります。

配偶者居住権に関しては、新しいものであるがゆえに、国民全体の理解を得るには、時間がかかるものと思います。

自動車相続手続を簡略化させる方法とは

■自動車の相続手続で手続を簡単にする方法があるんです!

相続財産の中に自動車がある場合、相続手続が必要となります。

神奈川県自動車相続手続代行サービス参照

一般的な自動車相続手続の流れとしては、

1.相続人の調査(戸籍謄本等の収集)
2.相続財産の調査(車検証)
3.遺産分割協議(相続人間で誰が相続するのか決める)
4.名義変更(陸運局にて手続)

以上となります。

不動産や預貯金があれば、同時に手続を行うので、自動車が加わったことによる負担はそれほど大きいわけではありません。

ただし、自動車だけの相続手続で、相続人が多い、あるいは連絡が取れない者や海外在住者あるいは未成年者、認知症の者までいたりすると相続人の調査や遺産分割協議で手間がかかります。

しかし、被相続人が所有者となっている自動車の相続手続に関して、これらのことが簡略できるケースがあります。

それは、相続される車両の査定額が100万円以下の場合です。

その際、査定額が100万円以下であることを証明する書類が必要です。

この場合は「遺産分割協議書」ではなく「遺産分割協議成立申立書」という専用の書式を利用します。

これを利用すると車の名義人となる相続人以外の書類が必要なくなります。

遺産分割協議成立申立書で簡略化できることとは、

・署名、実印の押印が、新所有者のみとなります。

・印鑑登録証明書の取得は、新所有者の分のみ必要となります。

・相続人であることの証明は、亡くなられた方と新所有者の関係性だけ証明できればよいので、戸籍謄本一式の取得すべき枚数が軽減されます。

必要書類
□遺産分割協議成立申立書
□相続する自動車の価額が100万円以下であることが確認できるもの(査定証など)
□被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本又は戸籍の全部事項証明書
□申請人が相続人であることを証明できる戸籍謄本又は戸籍の全部事項証明書
□相続人の印鑑証明書(自動車を相続する方のみ)
□車庫証明書(被相続人と住所が同じ場合は不要)
□自動車検査証

なお、当該車両を売却あるいは廃車にする場合も一旦、相続人名義にする必要があります。

すでに売却先が決まっている場合は、ダブル移転ということで、相続による名義変更と売却による名義変更(移転登録)の手続を同時に行うことができます。

また、廃車するにあたっても、移転抹消ということで、相続による名義変更と廃車手続(抹消登録)の手続を同時に行うことができます。

移転抹消登録とは参照

自動車の相続手続や売却や廃車までの手続に関しては、自動車登録に精通した行政書士に依頼するのが賢明です。

死亡診断書の写しを用意しておく必要性とは

■相続手続を行うための第一歩となるのが、死亡診断書です!

相続が発生してから、まずはじめに行うのは、死亡届です。

死亡を確認した時点で、医師に死亡診断書を記入してもらいます。

この死亡診断書と死亡届は、左右で1枚となっており、A3サイズになっています。

なお、死亡診断書に関しては、相続の届出で利用することが多いということをご存じない方も多いかと思います。

そのため、死亡診断書のコピーを必ず取っておく必要があります。

最低でも5部は取っておきましょう。

それでは、どのような手続で死亡診断書が必要になるのか、確認しておきましょう。

具体的には、

・年金の受給停止の手続

・健康保険や労災保険の埋葬料の請求

・生命保険の請求手続

等の手続で利用します。

万が一、死亡診断書を紛失してしまった場合は、死亡届の届け出先や本籍地の市町村役場へ死亡届の記載事項証明書の発行の請求します。

この請求は、特別な理由がない限り、発行されません。

そのため、死亡診断書のコピーを取っておけば、相続手続や保険金の請求で利用できるので、無駄な費用と労力を省くためにもおススメしているわけです。

相続が発生した際には、死亡診断書のコピーを必ず取っておくということを心掛けておくと、相続手続がスムーズになるのは、間違いありません。

連絡が取れなくなった相続人とは

■せっかく相続のご依頼をいただいても、最後までお手伝いできないのは無念です!

当相談所では、相続手続の依頼を受けた時は、依頼人の方と面談あるいは電話やメール等で、連絡を密にすることを心がけています。

大概は途中経過等を報告したり、必要書類の確認等を行うので問題ないのですが、まれに依頼人と連絡が取れなくなってしまうことがあります。

依頼人が仕事を抱えていれば、その点を考慮して、連絡を取り合うのですが、今回連絡が取れなくなった依頼人の場合は、やはり事情がありました。

この依頼人は、自宅とは異なる場所に住んでいたため、郵送でやり取りした際にいつまでたっても書類が返ってきませんでした。

電話をするにしても、夜8時以降にしてほしいということでしたので、指定時間に連絡しても、なかなかつながりませんでした。

途中まで書類収集や準備を進めてきましたが、連絡が取れなくなった時点で、こちらはキャンセルだと思い、放置していたところ、久々に連絡がありました。

当方は「連絡が取れないなら、今回の仕事はなかったことにします」と告げたところ、「申し訳ありませんでした。このまま継続してください。お願いします。」との回答でした。

しかし、その後、やはり連絡が取れなくなり、依頼を受けてから1年以上経過しても進展がないので、依頼を断り、これまでの作業した分の代金を請求することにしました。

この依頼人は、一見おとなしそうで、まじめそうなタイプでした。

しかし、どのような仕事をしているかは話しませんでしたが、あまり表立って話せるような仕事ではないようでした。

そのため、アパートを借りているにもかかわらず、別のところに住み込み、働いているようでした。

この依頼人は母親を小さいころに亡くして不遇な家庭生活を送っていたようです。

独身で身寄りもなく、孤独感が漂っていました。

それでも、育ててくれた父親の相続の依頼をしてきたわけですから、きちんと最後まで手続を終わらせようとする覚悟もなかったようです。

相続手続ができなくて困るのは、依頼人本人です。

相続手続は途中で止めてしまうとそのままになってしまうことが多いです。

亡くなった家族のためにも最後までやり遂げることが肝要です。