賃貸借契約における相続とは

賃貸借契約における相続とは

■相続には賃貸借契約が絡むこともありますので、論点整理です!

相続手続の中には、被相続人がアパートや貸家等のオーナーとして、不動産賃貸業を行っているケースもあります。

賃貸借契約が絡む中で相続が発生するとどのようになるのか、わからないという方も多いのではないでしょうか。

賃貸借契約において、相続が発生した場合、その契約はどうなるのかを見ていきます。

1.賃貸人が死亡した場合

賃貸人の地位そのものは、相続人に相続されます。

ただし、遺産分割前であれば、相続分に応じて家賃を請求できます。

これは、相続財産は相続人全員の共有財産という扱いになるためです。

例としては、家賃10万円で、相続人がA・B・C・Dの4人だとすると、A・B・C・Dは、賃借人に対して、それぞれ2万5千円ずつ賃料請求権を有することになります。

遺産分割後は、新賃貸人のみが家賃の10万円請求することができます。

なお、相続人がいるのか不明な場合であっても、賃貸借契約そのものは終了するわけではありません。

2.賃借人が死亡した場合

賃借人の地位は、相続人に承継されます。

賃借人の死亡後、相続人3人で相続した場合、賃貸人は新賃借人である3人全員に対して、家賃10万円を請求することができます。

これを不可分債務といいます。

3人全員に請求できるとはいっても、家賃が30万円になるわけではありません。

なお、相続人がいるのか不明な場合であっても、賃貸借契約そのものは終了するわけではありません。

もし相続人がいない場合であっても、内縁の配偶者や事実上の養子が同居していれば、賃借人の権利を承継します。

相続した人がその家に住まないのであれば、解約の申し出を行います。

以上となります。

賃貸人や賃借人に相続が発生しても、賃貸借契約が終了するわけではありませんので、ご安心ください。

ただし、賃貸人が高齢であれば、相続が発生することを備えて事前にその対策をしておくべきです。

不動産賃貸業も事業ですから、事業継承という視点で対策を取るのは当然のことです。

スムーズに承継されるように、生前相続対策を行うことは、家族のためでもあり、賃借人のためでもあります。

家族が承継するのであれば、その旨を遺言に遺したり、生前贈与を行う等の対策を検討してください。

家族がいても事業を承継できる人がいない場合や相続人がいない場合は、不動産の売却も検討してください。

賃借人も高齢であれば、要介護により施設へ入所するときや万が一のときに備えて、対策をしておくべきです。

自分がいなくなったら、同居者が住み続けるのか等を考えておきましょう。

単身者の場合は、相続人となる者に対して事前に伝えておくといざというときに慌てなくなります。

賃貸借契約における相続においても、生前の対策があるとスムーズに承継されます。