■子に障害がある場合、親としては早めに対策を立てる必要があります!
先日、60代の女性から、精神疾患を持つ30代の娘のことでご相談を受けました。
今、母と娘の二人暮らしで夫は数年前に他界されたとのこと。
娘さんは学校を卒業してから、定職に就いたことはなく、アルバイトをしながら、家事を手伝う日々を過ごしてきました。
娘さんは本当は定職に就きたいようで、就職活動も行ったそうですが、やはり精神疾患(アスペルガー)を抱えていることを伝えると、採用には至らないそうです。
精神疾患を抱えている場合、ストレスに弱く、長時間の労働はきびしいため、企業側も採用するのは、ためらうのでしょう。
この娘さんと面会しましたが、お話を聞くと、世の中のことに疎く、母親にべったり状態でした。
また、見る限りにおいて、どうも精神疾患だけではなく、全身が不調のようで、体のあちこちが痛かったり、動きづらいと話していました。
顔つきもやはり、普通とは異なるので、ダウン症の疑いもあるのかと思いました。
もちろん、当方は医師ではないので診断することはできませんが、あとで、母親からもそのようなニュアンスを聞いたので、ほぼ間違いないようでした。
ダウン症の場合、一番気を付けなければいけないのは、平均寿命が普通の方より短いという点です。
以前は平均寿命が50代でしたが、今は60代くらいです。
ですから、短い人生をいかに充実させるかということと、母親がいなくなった時のことを考えなければなりません。
まず、娘さんには、定職に就くのは難しいけれど、体が動くうちは、アルバイトやパートの仕事を無理のない範囲で続けてくださいとアドバイスしました。
わずかな金額であっても、収入があると精神的にも安定するからです。
仕事をすることで、社会と接点を持てますから、本人のやりがいや生きがいにもつながります。
あと、母親には、娘さんの財産管理について、お話しました。
母親が元気なうちは、ご自身で財産管理を行えばいいのですが、「自分がいなくなってしまったら、どうなるのか」という点について、財産管理を他人にまかせることも検討してみるように助言しました。
つまりは、親亡き後の子の財産管理をどのような方法で行うのかを考えておく必要があるからです。
母親が亡くなってしまった場合や要介護の状態になる等により財産管理を行えなくなるような不測の事態が発生した場合に備えておく必要があります。
娘さんの障害の程度や進行状況にもよりますが、母親が健在なうちに娘さんが自立できるように自立施設の利用等も考えてみることも必要です。
娘さんのように精神疾患を抱えている場合、ひとり暮らしをするのは、リスクが高いので、施設の利用や入所ができれば、安心です。
また、「親亡き後」のための生前対策として、成年後見制度の利用をご案内しました。
利用方法は意思能力があるかないかで判断すると以下のとおりです。
1)任意後見制度の利用
子が成年者で意思能力がある場合は、任意後見制度の利用が可能です。
今回のご相談では、娘さんは意思能力はあるので、任意後見契約の締結をおすすめしました。
任意後見人の候補者として、母親ではなく、専門家や法人と締結するのが、よろしいでしょう。
※任意後見制度とは参照
2)法定後見制度の利用
子が成年者で子に意思能力がない場合は、法定後見制度を利用します。
今回のご相談では当てはまりませんでした。
成年後見人は、親が就任することもできますが、将来的なことも考えると、やはり専門家に依頼することがよろしいでしょう。
母親も娘さんの今後のことを心配している様子がよく伝わりました。
母親もまだ元気なので、仕事をしているようですが、将来、支えることができなくなった後のことを考えておくことは賢明です。
専門家と連携し、成年後見制度をうまく活用して、将来のために対策を立ててもらいたいです。