相続よろず相談所

相続税における小規模宅地の評価減の特例とは

相続税における小規模宅地の評価減の特例とは

目次

平成22年度の税制改正で小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「小規模宅地等の特例」)が大きく変更されました。

小規模宅地等の特例については、これまで課税された申告書の被相続人のうち、この特例を適用している被相続人の割合が多く、また、相続税対策としても活用されてきました。

しかし、改正により適用要件が厳格化され、これまでのような節税効果が期待できなくなりました。

そのため、改正前の小規模宅地等の特例の適用を前提とした相続税対策を行っていた場合には、大幅な見直しが必要となります。

1.主な改正内容

改正前は、相続開始直前の状況により適用要件の判定をし、相続税の申告期限までの継続要件を満たせば80%減額、満たさなければ50%減額とされていました。

これが改正後は、相続開始の直前と申告期限の2つの時点の状況により適用要件の判定をし、相続税の申告期限(相続開始後10ヶ月)まで事業または居住を継続するという継続要件を満たさない場合は減額の対象とならず、継続している場合にのみ80%減額あるいは50%減額とされます。

特に、50%減額については、対象となる宅地等の範囲が大幅に狭まり、「被相続人または同一生計親族の不動産貸付業等の事業の用の供されている」ものだけが残されていることに要注意です。

このほか、共同相続の場合の適用要件の判定は取得者ごとに行うこと、1棟の建物の敷地の一部が特定居住用宅地等に該当する場合の貸付用部分の宅地等の80%減額の適用の廃止等の改正点があります。

その結果、改正前では80%減額または50%減額の適用が可能であった宅地等が改正後では適用そのものを受けられないということが生じます。

相続する土地 相続する人
土地の相続税評価
上限面積
平成21年度まで 平成22年度から 平成26年まで 平成27年から
自宅の土地 ※配偶者
※持ち家がない別居の親族
(申告期限まで保有)
※同居または同一生計の親族
(申告期限まで保有、居住)
80%減
80%減
240㎡
330㎡
持ち家がある別居の親族
50%減
減額なし
240㎡
330㎡
持ち家がある別居の親族だが、
共同相続人に※に該当する人
がいるとき
80%減
減額なし
240㎡
330㎡
自宅兼その他用途の土地(自宅の一部をアパートとしている賃貸等) ※配偶者
※持ち家がない別居の親族
(申告期限まで保有)
※同居または同一生計の親族
(申告期限まで保有、居住)
全宅地
80%減
自宅部分
の土地は
80%減
その他は
条件ごと
ケースに
より変化
ケースに
より変化
会社、工場等の事業用の土地 ☆親族(申告期限まで保有、事業引継)
80%減
80%減
400㎡
400㎡
親族以外の人
50%減
減額なし
200㎡
200㎡
親族以外の人だが、共同相続人に☆に該当する人がいるとき
80%減
減額なし
400㎡
400㎡
アパート、駐車場の貸付事業用の土地 親族(申告期限まで保有、事業引継)
50%減
50%減
200㎡
200㎡
親族以外の人
50%減
減額なし
200㎡
200㎡

 

2.適用のポイント

1)持ち家がある別居の親族の場合

適用基準の厳格化によって、最も影響が大きいケースは、「持ち家がある別居の親族」でしょう。

例えば、母親が実家に1人で住んでいて、その子供が自宅を持ち、別居していたケースを想定してみます。

母親が亡くなった場合、その子供は母親が住んでいた土地・建物を相続します。

平成21年度までは、子供は別居して、持ち家があったとしても、相続する土地の評価を50%まで減額することができました。

しかし、今後は、この減額ができなくなります。

また、持ち家がある別居の親族と共同相続人に配偶者・持ち家がない別居の親族・同居または同一生計の親族がいるケースですが、今までは、相続人のうちの誰かが80%減の適用を受けられる場合には、他の相続人も自動的に80%減の適用が受けられました。

しかし、今後は、適用の可否は相続人ごとに判断されることになります。

2)配偶者が相続する場合

配偶者が自宅の土地、建物を相続する場合は、無条件でこの特例が認められます。

3)同居していた子供が相続する場合

同居していた子どもが相続する場合は、被相続人の死亡の翌日から10ヵ月後の相続税の申告期限まで継続して住み続けることが条件となります。

それ以前に、引っ越したり、売却すると、自宅以外の財産を相続したものとみなされて、この特例が適用されなくなります。

4)同居していないが同一生計の親族が相続する場合

被相続人と同居していなくても、被相続人と生計を一つにする親族は、申告期限まで所有していれば、特例が認められる場合もあります。

また、被相続人に配偶者も同居していた親族もいない場合、持ち家がない別居親族(相続開始前3年以内に持ち家を所有していないことが条件)が取得し、申告期限まで所有していれば特例の適用が受けられます。

5)家を持たない子供の場合

被相続人の土地に居住していなかった子供が宅地を相続する場合は、子供が別に自宅を持っていたり、子供の配偶者名義の自宅を持っていたりすると特例は認められません。

しかし、持ち家がなく、アパートやマンションなど賃貸受託に住んでいる場合は特例が受けられます。

持ち家がある場合でも、売却するか賃貸住宅として貸し出し、いわゆる「家なき子」になれば、同様の減額が受けられます。

ただし、その場合でも、
(1)自宅の売却(貸し出し)から3年が経過していること、
(2)相続後は申告期限まで相続物件を所有すること

この2つの条件を満たさなければいけません。

いずれの場合にしても、早めに相続税対策を立てておくことが、重要になってきます。