相続よろず相談所

実家の相続対策

実家の相続対策

目次

1.実家の相続とは

相続でもめるケースとして多いのが、実家の相続です。

子供が2人以上いるケースで、相続税の課税の有無に関わらず、実家の相続でトラブルとなるのが、遺産の分け方です。

相続財産は実家の土地と建物しかないというケースで考えます。不動産は、現金や預貯金のように簡単に分けることはできません。

一次相続では、配偶者が実家を相続すれば、子供たちも文句は言いません。しかし、二次相続のときには、兄弟姉妹で争いに発展することも事実です。親と同居していても、法定相続分を要求してくることもあります。

実家の相続では、遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所に申し立てて調停に進むケースが増えています。相続をきっかけとして、兄弟姉妹の仲が険悪となり、付き合いが途絶えることになることもあります。

そのため、実家をめぐる相続対策は必要不可欠なものとなっています。

2.実家の相続対策とは

一般的に相続対策は、親に判断能力があるときまでに行う必要があります。なぜなら、判断能力が低下あるいは亡くなったときには相続対策を行うことができなくなるためです。

親に相続対策といってもきっかけがないと行動に移すことが難しいのも現実です。

例えば、実家が老朽化してリフォームが必要になったときや、親が定年退職したり、要介護になったとき等が相続対策を考える絶好のタイミングといえます。

忘れてはならない重要なことは、親の今後の暮らし方を考えるということです。エンディングノートを活用しながら考えるのもよろしいかと思います。

3.実家の相続対策のポイントとは

実家の相続対策のポイントは、

1)親が今後の実家に住み続けるのか
2)子が同居するか
3)子が将来、実家に住む予定か

以上の点から考察していきます。

ケース1 親と子が実家に同居するケース

高齢の親を実家でひとり暮らしさせるのは、孤独死の危険性もあり、心配ですが、子が同居を決心した場合には、税制面でメリットがあります。

同居することにより、小規模宅地等の特例が利用できると、330㎡までの土地の評価額が80%減となります。

例えば、土地の相続税評価額が5000万円であったとすると小規模宅地等の特例が利用できれば、1000万円の評価となり、相続税の総額も大きく減少します。

相続税における小規模宅地の評価減の特例とは参照

ただし、この特例を利用するためには、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまっていることが必至です。遺産分割協議で注意すべき点は、土地を共有名義にするとあとで、トラブルとなります。できれば、単独名義にしておくのが望ましいです。

また、遺産分割対策として、遺言書の作成生前贈与代償分割における生命保険の活用などの生前対策も検討しておきましょう。

1)実家をリフォームして、同居する

小規模宅地等の特例を利用するために親と同居することを決めたならば、実家のリフォームや二世帯住宅への建て替えも検討してみることも必要となってきます。

リフォームの場合は、キッチン等を増設したりする等、最低限の程度であるならば、時間的にも資金的にも抑えることができます。

土地が広く、かつ、資金的にも余裕がある場合は、二世帯住宅へ建て替えることも可能です。

左右で居住部分を振り分ける連棟タイプや上下で居住部分を住み分ける完全分離型もあります。完全同居とは異なり、親子それぞれの生活スタイルを尊重した暮らしができるのがメリットです。

なお、二世帯住宅では、資金の出し方により、区分登記(持分を別々に登記)する場合と共有名義で登記する場合があります。二世帯住宅で暮らす子が土地をすべて相続する場合、区分登記では、小規模宅地等の特例が適用できないことが多いのに対し、共有名義の場合は、小規模宅地等の特例が適用され、80%減額されます。

ケース2 親は実家に住み続けるが子は同居しないケース

1)実家を賃貸併用住宅にする

子が親と同居する予定がない場合の選択肢として、賃貸併用住宅に建て直すこともあります。

賃貸併用住宅とは、アパート等で自分が居住する部分と賃貸部分が一つの建物となっているものです。

賃貸併用住宅には、連棟型もあれば、上層階を居住部分として、下層階を住居や店舗として賃貸するケースもあります。親としては、収益を得ることも可能です。

相続税の評価としては、賃貸部分に相当する土地は、貸家建付地として、相続税の評価額は軽減されます。さらに小規模宅地等の特例により、貸付事業用の宅地は200㎡まで50%評価減となります。

ただし、賃貸併用住宅の建設費を借入した場合は、入居者が見つからなければ、返済計画に狂いが生じます。また、売却時に賃貸併用住宅では、買い手が見つかりにくいというデメリットがあります。

ケース3 親と子が実家には住まないケース

1)実家を賃貸住宅にする

子は同居せず、親が高齢でひとり暮らしをするには一戸建てでは広すぎる場合、親はマンションや高齢者住宅に住むケースが多いです。親が住まなくなった実家は立地が良ければ、賃貸住宅に建て替えることも検討してみる価値はあります。

賃貸住宅にするメリットは、家賃収入を得ることもできます。賃貸住宅を建てることで貸家建付地として評価されるのと小規模宅地等の特例を併用することで、相続税評価額が下がります。

デメリットは、多額の建築費用がかかります。自己資金で不足する場合は、借入が必要となります。その意味では投資となりますので、事業計画を綿密に作成しておく必要があります。

2)実家の土地を分割して、一戸建ての家を建てる

親子が実家に住む予定もなく、実家の敷地が広大ならば、土地を分割し、それぞれに戸建ての家を建てることもできます。その場合は、賃貸や売却等の有効活用ができます。

メリットとしては、一戸建ての賃貸物件ならば、長期間利用してもらえる可能性が高いので、経営は安定します。また、土地の相続税評価額も下がります。分割することで、将来の遺産分割でも分けやすくなります。

デメリットは、建築費用はアパートよりも割高となるので、収益は少なくなります。自己資金で不足する場合は、借入が必要となります。事業として採算が合うのか、事業計画を綿密に作成しておく必要があります。

3)実家を賃貸・売却する

親子が実家に住むことなく、空き家にしておくのがもったいないならば、賃貸にすることも検討してみます。

メリットとしては、賃貸にすることで自宅の土地は貸家建付地となり、相続税評価額が下がります。また、小規模宅地等の特例も利用できます。

デメリットとしては、賃貸にするためには、リフォームの費用負担が必要となります。

相続人が複数いて、遺産分割協議でまとまらない場合は、売却することも視野に入れます。共有名義で遺産分割をまとめた上で、登記完了後に売却の準備を進めていきます。

相続不動産売却手続サポートサービス参照