1.補助制度の概要
補助とは、比較的軽度な精神上の障害を持つ人のための制度です。「事理を弁識する能力が不十分な人」を対象とし、従来の制度では保護の対象とならなかった軽度の精神上の障害を有する者を保護の対象とした新しい制度です。
具体的には、重要な財産行為は自分でできるか心配なので、誰かに代わってやってもらったほうがよい、ある事柄はわかるが他のことはまったくよくわからないなど、まだら呆けの軽度にあたる方です。
家庭裁判所によって選ばれた補助人には、申立により選択した特定の法律の代理権と取消権が付与されます。
代理権の付与は、本人の申立または同意を要件としています。
ただし、日用品の購入は対象外です。日用品購入以外は、本人が補助人の同意を得ずに行為を行った場合は、本人または補助人が取り消すことができます。
補助の制度の事例
今回は、「補助」の事例をご紹介します。
Cさんは、訪問販売員から必要のない高級ベッドや布団を何枚も購入してしまいました。困った長男が家庭裁判所に補助開始の審判の申立をし、併せてCさんが10万円以上の商品を購入することについて同意権付与の審判の申立をしました。
家庭裁判所の審理を経て、Cさんについて補助が開始され、長男が補助人に選任されて同意権が与えられました。
その結果、Cさんが長男に断りなく10万円以上の商品を購入してしまった場合には、長男がその契約を取り消すことができるようになりました。
この事例のように、悪徳商法対策として成年後見制度を活用するケースも増えています。
2.補助の申立
補助の開始の申立を行うことができるのは、以下のとおりです。
申立権者
□本人・配偶者
□四親等内の親族(本人の甥・姪やその子、いとことその配偶者、祖父母の兄弟とその配偶者、祖父母の祖父母とその配偶者、兄弟の孫とその配偶者、孫の孫とその配偶者まで)
□後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人
□検察官
□任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人
□市町村長(身寄りのない者)
ただし、本人以外の者の請求により補助開始の審判を行う場合には、本人の同意が必要です。
家庭裁判所へ申立するときの必要書類
申立人
□戸籍謄本
□申立事情説明書
□親族関係図
□代理行為目録
□同意行為目録
本 人
□戸籍謄本
□住民票
□成年後見登記事項証明書(登記されていないことの証明書)
□本人の収支予定表
□医師の診断書
□財産目録
(□不動産登記簿謄本 □通帳の写し □株券の写し □保険証券の写し □年金証書の写し □給与明細書の写し
□確定申告書の写し □医療費の写し □税金・健康保険料などの写し)
□その他(□介護保険証書の写し □障害者手帳の写し □療育手帳 □施設入居証明書の写し)
補助人候補者
□戸籍謄本
□住民票
□後見人等候補者事情説明書
その他(裁判所の指示にしたがい購入する)
□収入印紙800円
□登記手数料2,600円
□郵便切手4,000円分
3.補助の開始
A.同意権・取消権
家庭裁判所は、本人(被補助人)の行為に対し、補助人に保佐人の同意が必要な行為の事項の中から、申立の範囲内で、本人の状況に応じて個別的に同意権を付与します。ただし、日常生活に関する行為は除かれます。
同意権付与の審判がなされると、その特定の法律行為について本人が補助人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないで行った場合には、本人及び補助人はこれを取り消すことができます。
B.代理権
家庭裁判所は、補助人に、本人が行う特定の法律行為についての代理権を与えることができます。ただし、この申立の請求が本人以外である場合、本人の同意が必要です。
代理権の付与される法律行為は民法第12条に規定する事項の範囲内という制限はなく、財産管理及び身上監護(生活又は療養看護)に関する法律行為(例えば、介護契約、施設入所契約、医療契約の締結等)が含まれます。
この代理権が付与される特定の法律行為は、申立の範囲内で家庭裁判所が本人の状況に応じて個別的に決定されます。なお、居住用不動産の処分については、家庭裁判所の許可が必要です。
付与の追加及び取消
補助開始の審判後に代理権又は同意権の追加又は範囲の拡張が必要となったときは、申立により、追加的にその付与の審判を求めることができます。
また、代理権又は同意権の全部又は一部を維持する必要性がなくなったときは、その付与の審判の全部又は一部の取り消しを求めることもできます。
なお、家庭裁判所は、すべての代理権・同意権の付与の審判を取り消すときは、職権で、補助開始の審判を取り消すこととされています。
4.補助制度の終了
補助が終了するのは、以下のときです。
□本人の判断能力の回復により補助開始の原因が止んだとき
□本人の死亡