献体と臓器提供と尊厳死

尊厳死を公正証書にする意義とは

■尊厳死を希望する方は、公正証書にしておけば、安心です!

先日、公証役場にて、尊厳死宣言公正証書の作成手続を行いました。

現代医学では、治る見込みのない病気で苦しんでいる病人に対して、延命治療の実施しています。

延命治療を行えば、本人にとっても家族にとっても大きな負担がかかります。

そのため、延命治療をせずに自然なままで亡くなりたいという人間としての尊厳ある死を自己決定しようというのが尊厳死です。

尊厳死を希望しても、その旨を意思表示しておかなければ、延命治療が行われることになります。

「単なる延命治療は望まない」

「植物状態になったら生命維持装置を外してほしい」

「自然に死にたい」

これらの要望を確実に実行してもらうためには、どうすればいいのでしょうか。

それは、公正証書にしておくことです。

尊厳死宣言公正証書を作成しておけば、いざ、植物状態になったとしても、家族がその書面を医師に提示することにより、延命治療が行われることなく、尊厳死の意思が反映されます。

ですから、尊厳死を希望する方は元気なうちに公正証書を作成しておくことをおすすめいたします。

ちなみに、尊厳死宣言公正証書の文面は、ほぼ固定されたものです。

注意点としては、尊厳死宣言公正証書作成にあたり、家族の同意を得ておく必要があります。

尊厳死宣言公正証書を作成するための必要書類は、以下のとおりです。

□印鑑登録証明書(公正証書作成の日から3か月以内に発行されたものであること)及び実印
□運転免許証及び認印
□パスポート及び認印
□住民基本台帳カード(写真付き)及び認印
□その他顔写真入りの公的機関発行の証明書及び認印

上記5つまでのうちのいずれか1つをご用意ください。

尊厳死宣言公正証書の作成と同時に遺言や任意後見契約を作成する場合は、印鑑登録証明書が共通の必要書類となりますので、こちらをご用意ください。

また、公証役場での手数料は、11,750円となります。

終活において、尊厳死まで考えておく方は増えています。

ぜひとも、遺される家族や親族のためにも、尊厳死について考えてみるのもよろしいかと思います。

単身者の献体とは

■単身者で献体と納骨を希望する場合にすることとは

一人暮らしをしている方が増えていますが、そうした方から終活に関するご相談をいただく機会も増えています。

先日も一人暮らしの男性の方から、献体に関するご相談をいただきました。

自分自身が亡くなった後、大学病院へ遺体を献体したいのだが、そのあと、納骨までやってくれる大学病院はあるのか探してほしいという内容でした。

献体とは、医歯学系の大学での人体解剖学の研究に役立たせるために、遺体を提供することです。

献体を行うためには、家族全員の同意が必要不可欠です。

同意が必要な家族は、配偶者・親・子・兄弟姉妹などです。

でも、この方のように一人暮らしで、親や子もいない、兄弟姉妹もいないという方の場合は、本人の同意だけで献体を行うことが可能となります。

ですから、献体のあと、納骨まで大学で行ってもらえるとありがたいので、そのようなご相談をされたわけです。

お気持ちはわかるのですが、現実には大学は献体までは行いますが、納骨までは行いません。

そのことを依頼者に伝えたところ、納得してもらいました。

納骨は、近親者がいない場合は遺言と併せて、遺言執行者に依頼する方法もあります。

また、終活団体や寺院に相談してみるのもよろしいかと思います。

一人暮らしの方は、亡くなった後のことをきちんと生前に決めておくことで、遺される方の負担を軽減できますので、献体だけでなく、納骨に関しても事前に決めておくことが肝要です。

リビングウィルによる終末期医療の意思表示とは

■自分らしい最期を迎えるためには、リビングウイルで意思表示しましょう!

終末期の治療において、回復の見込がない場合、どういう治療を望むのかを選択し、書面に残すのが「リビングウイル」です。

リビングウイルは「尊厳死の宣告書」と同じです。

書面に意思表示をする訳ですが、日本尊厳死協会のものは、さらに細かく選択肢を設けていますね。

「希望する」、「希望しない」、「病院に一任する」など自己の意思表示をすることができるのです。

項目としては、例えば、「胃ろうなどを介した栄養摂取」、「高カロリー輸液点滴での栄養補給」、「水分補給のための点滴」、「人工呼吸器の装着」、「集中治療室への入室」など。

今は、本人だけでなく、夫婦2人で同時に作成するケースも増えています。

自分らしい最期について考えるきっかけになるのではないでしょうか。

脳バンクとは

■脳を研究することで、脳の病気や治療法に役立つために今こそ脳バンク

臓器提供の選択肢の一つとして、にわかに注目を浴びているのが、「脳バンク」です。

脳バンクとは、脳の病気の解明や治療法の開発のために病理解剖をして脳を取り出し、保存しておくもの。

献体や臓器提供と同様に自分の死後に研究に使用することを本人と家族が同意するシステムもあります。

脳バンクは現在、福島県立医科大学が事務局の「精神疾患死後脳バンク 」と国立精神・神経医療研究センターが事務局の「パーキンソン病ブレインバンク 」があります。

パーキンソン病やうつ病など脳に関する病気はまだ解明されていないものが多いです。

病気の解明につなげるためにも、制度の普及と浸透が今後欠かせません。