成年後見制度

障害を持つ子のための生前対策とは

子に障害がある場合、親としては早めに対策を立てる必要があります!

先日、60代の女性から、精神疾患を持つ30代の娘のことでご相談を受けました。

今、母と娘の二人暮らしで夫は数年前に他界されたとのこと。

娘さんは学校を卒業してから、定職に就いたことはなく、アルバイトをしながら、家事を手伝う日々を過ごしてきました。

娘さんは本当は定職に就きたいようで、就職活動も行ったそうですが、やはり精神疾患(アスペルガー)を抱えていることを伝えると、採用には至らないそうです。

精神疾患を抱えている場合、ストレスに弱く、長時間の労働はきびしいため、企業側も採用するのは、ためらうのでしょう。

この娘さんと面会しましたが、お話を聞くと、世の中のことに疎く、母親にべったり状態でした。

また、見る限りにおいて、どうも精神疾患だけではなく、全身が不調のようで、体のあちこちが痛かったり、動きづらいと話していました。

顔つきもやはり、普通とは異なるので、ダウン症の疑いもあるのかと思いました。

もちろん、当方は医師ではないので診断することはできませんが、あとで、母親からもそのようなニュアンスを聞いたので、ほぼ間違いないようでした。

ダウン症の場合、一番気を付けなければいけないのは、平均寿命が普通の方より短いという点です。

以前は平均寿命が50代でしたが、今は60代くらいです。

ですから、短い人生をいかに充実させるかということと、母親がいなくなった時のことを考えなければなりません。

まず、娘さんには、定職に就くのは難しいけれど、体が動くうちは、アルバイトやパートの仕事を無理のない範囲で続けてくださいとアドバイスしました。

わずかな金額であっても、収入があると精神的にも安定するからです。

仕事をすることで、社会と接点を持てますから、本人のやりがいや生きがいにもつながります。

あと、母親には、娘さんの財産管理について、お話しました。

母親が元気なうちは、ご自身で財産管理を行えばいいのですが、「自分がいなくなってしまったら、どうなるのか」という点について、財産管理を他人にまかせることも検討してみるように助言しました。

つまりは、親亡き後の子の財産管理をどのような方法で行うのかを考えておく必要があるからです。

母親が亡くなってしまった場合や要介護の状態になる等により財産管理を行えなくなるような不測の事態が発生した場合に備えておく必要があります。

娘さんの障害の程度や進行状況にもよりますが、母親が健在なうちに娘さんが自立できるように自立施設の利用等も考えてみることも必要です。

娘さんのように精神疾患を抱えている場合、ひとり暮らしをするのは、リスクが高いので、施設の利用や入所ができれば、安心です。

また、「親亡き後」のための生前対策として、成年後見制度の利用をご案内しました。

利用方法は意思能力があるかないかで判断すると以下のとおりです。

1)任意後見制度の利用

子が成年者で意思能力がある場合は、任意後見制度の利用が可能です。

今回のご相談では、娘さんは意思能力はあるので、任意後見契約の締結をおすすめしました。

任意後見人の候補者として、母親ではなく、専門家や法人と締結するのが、よろしいでしょう。

任意後見制度とは参照

2)法定後見制度の利用

子が成年者で子に意思能力がない場合は、法定後見制度を利用します。

今回のご相談では当てはまりませんでした。

成年後見人は、親が就任することもできますが、将来的なことも考えると、やはり専門家に依頼することがよろしいでしょう。

母親も娘さんの今後のことを心配している様子がよく伝わりました。

母親もまだ元気なので、仕事をしているようですが、将来、支えることができなくなった後のことを考えておくことは賢明です。

専門家と連携し、成年後見制度をうまく活用して、将来のために対策を立ててもらいたいです。

認知症対策とは

■相続対策や終活においても認知症になったときのことを考えておく必要があります!

相続税が改正されてから、相続対策がますます重要となりました。

相続対策といえば、一般的に以下の3つがあげられます。

1.遺産分割対策

2.納税資金対策

3.節税対策

通常はこの3つを考慮して、生前の相続対策を立てるわけですが、最近では、もう一つ重要な対策が加わっています。

4つ目の相続対策として取り上げられているのが、「認知症対策」です。

認知症対策とは、認知症により判断能力が低下あるいはなくなることで、財産管理ができなくなるために、誰が財産管理をするのか考えておくことです。

認知症対策がなぜ相続対策に加わったのかというと、2025年には65歳以上の認知症の方が700万人になると推測されています。

つまりは65歳以上の方の5人に1人は認知症になるということです。

それだけ人数が多いにもかかわらず、何も対策を立てない多いのが事実のため、専門家からそのリスクを提唱されているわけです。

また、認知症となる期間が平均して10年あります。

人生の終末期が認知症として10年もあれば、それだけ、家族には負担となります。

認知症が発生してしまうと、相続対策を立てることが出来なくなります。

そのため、認知症対策として、認知症になる前に具体的な対策を立てることが求められています。

認知症対策として、注目されているのは、「民事信託」です。

信託契約を締結し、受託者として、家族の誰かを指定して財産管理をまかせるものです。

家族信託が有名ですが、成年後見制度を補完するものとして、相続対策でも注目を浴びています。

しかし、実際に利用する方はかなり少ないのが実情です。

なぜなら、家族の中で財産管理の運営を行うことができない方が多いためです。

その意味では、やはり、成年後見制度を活用した方がよろしいかと思います。

遺言をあわせて任意後見契約を締結することで、判断能力のある状態から、認知症となったときや死亡後まで、財産管理運営を行ってもらえます。

なので、当事務所としては、認知症対策としては、公正証書遺言とあわせて、任意後見契約の締結をおすすめしています。

相続対策の新たな視点となる「認知症対策」を立てているのかどうかが、これからの財産管理に求められてきます。

認知症カフェとは

■認知症対策として新たに誕生したコミュニティの場とは

認知症になる方は増えており、認知症の方を支える家族も大変な苦労をしています。

また、認知症が原因で交通事故を起こすケースも増えており、家族だけでなく社会問題となっています。

そのような中で家族や地域の人々と共に認知症や介護について語り合う場が設けられています。

そのような場を「認知症カフェ」といいます。

認知症カフェの普及に関しては、厚生労働省が「認知症施策推進総合戦略(通称:新オレンジプラン)」の中で認知症の介護者の負担軽減策として掲げたものです。

行政側からの政策でもありますが、地域の中でも居場所づくりに取り組む活動も見られていますので、行政主導だけでなく、地域住民主導でもあります。

認知症カフェは、行政機関でも病院や介護施設でもありませんので、気軽に足を運べます。

認知症の方を支える家族の方にとっては、交流を通じて、介護の情報共有とともにリラックスできる場であるでしょう。

要するに認知症カフェとは、地域コミュニティの場であるということです。

空き家が増えていますので、空き家を認知症カフェとして活用するケースも増えています。

介護サービスを受ける前に気軽に足を運んで相談してみるとよろしいかと思います。

今後、このような場が増えてくることを願います。

後見人の不正に伴う見舞金制度の創設とは

■成年後見制度で不正が続発するための対処法とは

成年後見制度が導入されてから、早17年が経過しました。

後見開始の申立件数も増加し、この制度が社会に浸透しつつある状況になりました。

ただし、その裏で、後見人が被後見人の財産を着服する事件も増加しています。

弁護士であれ、行政書士であれ、このような事件が起きるたびに胸が痛みます。

本当に残念なことです。

そんな中で、日本弁護士連合会は、成年後見制度で、弁護士が財産を着服する等不正があった場合に、見舞金を支給する制度を導入しました。

この制度は、確かに依頼人の被害を救済するために創設しようとするものであることは理解できます。

しかしながら、これでは、弁護士は後見人として、不正することを会として認めているも同然です。

弁護士に後見人を依頼するとこのようなリスクがあると思われてしまいます。

それでは、制度の趣旨を理解していないばかりか、他士業にも影響が出ます。

日弁連がやるべきことは、後見人として不正を行えば、資格だけでなく、これまで行ってきたことのすべてを失うことと、家族を路頭に迷わすことにつながるということを認識させるべきです。

後見人がやるべきことは何かということをきちんと理解していれば、このような制度は不要であると言えるはずです。

入院手続きの代行とは

■身寄りのない方が入院するときに手続を代行してもらうためには

成年後見制度の主な目的は、財産管理です。

そして、次に多いのが、身上監護です。

身上監護とは、医療や施設への入退所に関する事項などの契約締結、履行の監視、費用の支払、契約の解除などの行為、介護契約・医療契約の締結等です。

今回、老人ホームに入所中で、当方が財産管理の委任契約を締結している方が手術のために入院することになりました。

そのため、当方が入院手続きの代行を行いました。

財産管理の委任契約とは、成年後見制度の任意後見契約を締結した際に、あらかじめ同時に締結している契約です。

その中には、身上監護も含まれているために代行した次第です。

つまり、簡単に言えば、病院への入院の手続代行とは、身上監護にあたる行為ということです。

実際の入院手続きでは、入院する前に診察が必要だったこともあり、介護タクシーで病院まで同行し、付添しました。

その後、入院時も同様に介護タクシーで病院へ同行して、手続後、診察を経て、入院という流れでした。

診察に時間がかかったため、入院に至るまで大変でした。

今回は、車いすの方でしたので、一人での対応は難しいと思ったので、シニアライフサポートセンターのスタッフに手伝ってもらいました。

ひとり暮らしで、困ったときに手助けしてもらえる方がいない方は、成年後見制度をぜひ活用してください。