自筆証書遺言の作成にこだわる相談者とは

■自筆証書遺言を作成するときに気を付けないといけないこととは

先日、メールで遺言を作成したいという方からご相談がありました。

現在、末期がんで自宅で療養中で外出は難しいとのことで、独身であり、近くに親類もいないため、遠方にいる甥に全財産である預金をあげたいという内容でした。

メールでやり取りした結果、依頼を受けることになり、遺言の内容の詳細を確認したり、必要書類の収集に取り組みはじめました。

当方としては、公正証書遺言の作成で依頼を受けたのですが、なぜか相談者が突然、自筆証書遺言の作成でお願いしたいと言い始めました。

書類の収集に時間がかかりそうなため、公正証書遺言を作成するまでの繋ぎ役として、自筆証書遺言を作成するのでしたら、よろしいかと思いますと回答しました。

しかし、相談者はどうしても自筆証書遺言の作成で進めてほしいといい、自筆証書遺言のひな型まで送ってくる有様でした。

法改正で自筆証書遺言の作成に関して、メリットが生じたことから、今後、自筆証書遺言を作成する方が増えることが想定されます。

確かに自筆証書遺言ならば、費用も掛からず簡単に作成できますし、証人もいりませんから、手っ取り早く作成したいときには、いいかもしれません。

しかしながら、自筆証書遺言の場合、デメリットも多いです。

まず、遺言書が見つからないこともよくあります。

特にひとり暮らしをしている方の場合、遺言の存在そのものが不明なため、遺族も探すことなく、相続手続を進めてしまうケースも多いです。

さらに型式が不備なことが多いです。

自分勝手な型式だったり、書き方が誤っていれば、遺言書としては無効となってしまいます。

特に今回の相談者の場合、財産をあげたいという対象の甥とは、ほとんど交流がないため、名前もうろ覚えでした。

甥の名前が違うまま作成しても無効ですから、その調査も含めてから進めるべきでした。

また、自筆証書遺言においては、裁判所での検認手続が必要です。

検認手続を行えば、相続財産をあげる予定のない相続人にも裁判所から通知が届くことになり、結果的に迷惑をかけることにもなりかねません。

法改正で法務局が自筆証書遺言を保管するサービスが2020年7月10日より始まりました。

これなら、法務局のチェックも入るので安心かと思いきや、法務局は簡単な型式確認はしますが、内容の審査そのものを行うわけではありません。

ただし、家庭裁判所による検認の手続が不要となります。

これは、今まで大きな負担であった検認手続がなくなったので、自筆証書遺言を作成後に法務局へ保管する方が増えると思います。

ただし、保管するためには、遺言作成者本人が法務局へ行かなければなりません。

病気や障害等により、外出が困難な方は、法務局へ保管することができなくなりますので、注意が必要です。

ちなみに今回の相談者の方も外出は難しい方ですので、自筆証書遺言を作成しても検認の手続が必要です。

その手続の負担等もまったく考慮せず、やみくもに自筆証書遺言の作成を進めようとするので、今回、残念ながら当職は手を引きました。

メールだけのやり取りでは、うまく意思疎通ができなかった面もありました。

末期がんであるために焦る気持ちは理解できますが、当初の条件を変えてしまうやり方には、やはり、納得がいきませんでした。

結局のところ、この方は自筆証書遺言を作成したものの、その後の手続がどうなるのかがよく理解できていないままです。

遺言を作成することのみばかりを優先してしまい、その内容が確実に実行されるようにすることに関しては、頭に入っていませんでした。

この相談者のように、自筆証書遺言の作成にこだわることに、メリットはありません。

まだ時間に余裕があるのであれば、公正証書遺言にしておくべきでした。

遺言を作成することを検討中の方は、ぜひとも公正証書遺言で作成することにこだわっていただきたいと思います。

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