相続よろず相談所

後見の制度とは

後見の制度とは

目次

1.後見制度の概要

後見とは、精神上の障害(アルツハイマー、脳血管性、知的障害などで身体障害は対象外)により、判断能力を欠く常況にある者が対象となります。

具体的には、日常的な買い物も自分でできない、自分の居場所や家族の名前もわからない、あるいは完全な植物状態になっている方です。

家庭裁判所によって選ばれた成年後見人には、付与された代理権と取消権を行使することで判断能力の不十分な本人の利益を考えながら、本人を保護・支援します。

本人の財産に関するすべての法律行為を代理することができますが、日用品の購入は対象外です。

日用品購入以外は、本人または成年後見人が取り消すことができます。

後見の制度の事例

「後見」の事例をご紹介します。

Aさんはアルツハイマー病により、物忘れがひどくなり、日常生活においても、家族の判別がつかなくなりました。その症状は重くなる一方で回復の見込みはなく、半年前から入院しています。

Aさんは生命保険に加入していました。保険会社に病状を伝えると、高度障害に該当するので、生前に保険金を支払うことができると教えてもらいました。保険金受領のために、Aさんの妻は後見開始の審判を申し立てました。

家庭裁判所の審理を経て、Aさんについて後見が開始され、Aさんの財産管理や身上監護をこれまで事実上担ってきた妻が成年後見人に選任され、妻は保険金受領の手続を行いました。

この事例のように、生命保険金の受領が要因となって、成年後見制度を利用するケースも増えています。

2.後見の申立

「後見」の開始の申立ができるのは、以下のとおりです。

□本人・配偶者
□四親等内の親族(本人の甥・姪やその子、いとことその配偶者、祖父母の兄弟とその配偶者、祖父母の祖父母とその配偶者、兄弟の孫とその配偶者、孫の孫とその配偶者まで)
□未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人
□検察官
□任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人
□市町村長(身寄りのない者)

家庭裁判所へ申立するときの必要書類

申立人
□戸籍謄本
□申立事情説明書
□親族関係図

本 人
□戸籍謄本
□住民票
□成年後見登記事項証明書(登記されていないことの証明書)
□本人の収支予定表
□医師の診断書
□財産目録
(□不動産登記簿謄本 □通帳の写し □株券の写し □保険証券の写し  □年金証書の写し □給与明細書の写し
□確定申告書の写し  □医療費の写し □税金・健康保険料などの写し)
□その他(□介護保険証書の写し □障害者手帳の写し □療育手帳  □施設入居証明書の写し)

後見人候補者
□戸籍謄本
□住民票
□後見人等候補者事情説明書

その他(裁判所の指示にしたがい購入する)
□収入印紙800円
□登記手数料2,600円
□郵便切手4,000円分

3.後見の開始

家庭裁判所は、後見開始の審判において、本人(成年被後見人)のために成年後見人を選任します。成年後見人には、広範な代理権と取消権が付与されます。

A.代理権(財産管理権)

成年後見人に対して、本人(成年被後見人)の財産を管理し、その財産管理に関する法律行為についての包括的な代理権(財産管理権)が付与されます。ただし、居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可を必要です。

B.取消権

本人の行った法律行為は、取り消すことができます。取消権者は、本人と成年後見人です。
ただし、自己決定の尊重の観点から、日用品の購入その他日常生活に関する行為は、取消権の対象から除外されています。

4.後見の終了

後見が終了するときは以下のとおりです。

□本人の判断能力の回復により後見開始の原因が止んだとき
□本人の死亡