相続よろず相談所

保佐の制度とは

保佐の制度とは

目次

1.保佐制度の概要

保佐とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者、すなわち精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害等)により判断能力が著しく不十分な者を対象とする制度です。

具体的には、日常的な買い物は自分でできるが、不動産の売買や金銭の貸し借りなどの重要な財産行為は自分ではできない、ある事柄はわかるが他のことはまったくよくわからないなど、まだら呆けの重度にあたる方です。

家庭裁判所によって選ばれた保佐人には、申立により選択した特定の法律行為の代理権と取消権が付与されます。

代理権の付与は、本人の申立または同意を要件としています。

ただし、日用品の購入は対象外です。日用品購入以外は、本人が保佐人の同意を得ずに行為を行った場合は、本人または保佐人が取り消すことができます。

保佐の制度の事例

「保佐」の事例をご紹介します。

Bさんは生まれつき知的障害がありました。中学校を卒業後、就職しましたが、職場の同僚から金銭を騙し取られたり、悪徳商法の被害に遭う等トラブルが多かったです。

また、浪費癖もありました。母親の預金を無断で引き出してしまうことも多々ありました。心配した家族からの相談で、保佐開始の審判の申立をしました。

家庭裁判所の審理を経て、Bさんについて保佐が開始され、本人の妹が保佐人に選任されました。代理権付与として、金融機関での預金の引き出しなどの代理権も保佐人に付与されました。

その後、保佐人に無断で契約した個人年金の契約は、保佐人が取り消しました。今本人は、財産管理を任せることができてホッとしています。

この事例のように、悪徳商法対策として成年後見制度を活用するケースも増えています。

2.保佐の申立

保佐の開始の申立を行うことができるのは、以下のとおりです。

申立権者
□本人・配偶者
□四親等内の親族(本人の甥・姪やその子、いとことその配偶者、祖父母の兄弟とその配偶者、祖父母の祖父母とその配偶者、兄弟の孫とその配偶者、孫の孫とその配偶者まで)
□後見人、後見監督人、補助人、補助監督人
□検察官
□任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人
□市町村長(身寄りのない者)

なお、本人以外からの保佐の申立の場合、補助とは異なり本人の同意は不要です。

家庭裁判所へ申立するときの必要書類

申立人
□戸籍謄本
□申立事情説明書
□親族関係図
□代理行為目録

本 人
□戸籍謄本
□住民票
□成年後見登記事項証明書(登記されていないことの証明書)
□本人の収支予定表
□医師の診断書
□財産目録
(□不動産登記簿謄本 □通帳の写し □株券の写し □保険証券の写し □年金証書の写し □給与明細書の写し
□確定申告書の写し □医療費の写し □税金・健康保険料などの写し)
□その他(□介護保険証書の写し □障害者手帳の写し □療育手帳  □施設入居証明書の写し)

保佐人候補者
□戸籍謄本
□住民票
□後見人等候補者事情説明書

その他(裁判所の指示にしたがい購入する)
□収入印紙800円
□登記手数料2,600円
□郵便切手4,000円分

3.保佐の開始

A.同意権・取消権

家庭裁判所は、本人(被保佐人)が「重要な行為」を行うときは保佐人の同意が必要です。
ただし、日常生活に関する行為は除かれます。

「重要な行為」として次の事項です。
□元本の領収、利用(弁済金の受領、賃貸不動産の返還を受けること、不動産の貸付、預貯金の出し入れなど)
□金銭の借入、保証
□不動産その他の重要な財産(自動車、株式、貴金属、ゴルフ会員権、特許権、著作権等)の売買、担保の設定など
□訴訟行為
□贈与、和解、仲裁契約
□相続の承認・放棄、遺産分割
□贈与・遺贈の拒絶、負担付贈与・遺贈の受諾
□新築、改築、増築、大修繕
□長期の賃貸借契約(山林は10年、その他の土地は5年、建物は3年、動産は6か月を超えるもの)をすること

同意権付与の審判がなされるとその「重要な行為」について、本人が保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないで行った場合には、本人及び保佐人はこれを取り消すことができます。

また、家庭裁判所は、必要があると認めるときは保佐開始の審判の申立権者、保佐人、保佐監督人等の申立てにより、「重要な行為」以外の行為についても保佐人の同意を必要とする内容の審判を経て、保佐人に同意権を付与することができます。この審判は、保佐開始の審判と同時にすることも、後に追加的にすることもできます。

B.代理権

家庭裁判所は、保佐人に特定の法律行為について代理権を与えることができます(代理権付与の審判)。

この代理権の付与には、本人の同意が必要です。

代理権の付与される法律行為は民法第12条に規定する事項の範囲内という制限はなく、婚姻や遺言のように本人しかできないもの(一身専属的行為)を除くどのような法律行為についても付与されます。

特定の法律行為は申立の範囲内で、家庭裁判所が本人の状況に応じて個別的に決定します。ただし、居住用不動産の処分は家庭裁判所の許可が必要です。

4.保佐の終了

保佐が終了するときは、以下のとおりです。

□本人の判断能力の回復により保佐開始の原因が止んだとき
□本人の死亡