成年後見制度とは


今や認知症の社会であるということをご存知ですか?

超高齢社会を迎え、高齢者の様々な課題に直面する機会が増加しています。その中でも、認知症に関する問題は、極めて深刻です。65歳以上の方の認知症の方は、2012年の時点で全国に462万人います。高齢者の7人に1人の割合です。2025年には、700万人(高齢者の5人に1人の割合)に到達すると予測されています。

1.成年後見制度の概要とは

認知症の高齢者の増加にともない、悪徳商法の被害が増えています。

認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり(財産管理)、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり(身上監護)、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。

そうした中、成年後見制度は注目を浴びています。成年後見制度とは、判断能力の不十分な方々の権利が守られるように支援する制度です。2000年4月1日よりスタートしました。

ただし、判断能力がある身体障害者の方は対象外です。

1)旧制度の弊害

2000年の改正以前には、成年後見制度に該当するものとして、「禁治産・準禁治産」というものがありました。

この制度は、かねてより、使い勝手が悪いと批判されていました。この制度では、「心神喪失」や「心身耗弱」という要件が厳格すぎて、軽度の認知症・知的障害・精神障害に対応できませんでした。

また、夫婦の場合は必ず配偶者が後見人となると規定されているが、配偶者もある程度高齢となっているため、後見人の職務を全うできません。それに加えて、戸籍に記載されてしまうので、親族からすると恥ずかしいという思いもありました。そして、なんといっても、「禁治産」という用語が非常に印象が悪い点もありました。

こうした弊害を改善したのが、成年後見制度なのです。

2)成年後見制度の制定を定めた法律とは

高齢社会への対応と障がい者福祉の充実と諸外国の成年後見立法の動向を踏まえ、柔軟かつ利用しやすい成年後見制度を構築するために、法整備が行われました。

成年後見制度に関する法律は、
1.民法の一部を改正する法律
2.任意後見契約に関する法律
3.後見登記等に関する法律
4.民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

これらの法律に基づく新しい成年後見制度は2000年4月1日より施行されています。

3)成年後見制度の目的

成年後見制度の目的は、高齢社会への対応と知的障害者・精神障害者等の福祉の充実の観点から、
1.自己決定の尊重
2.残存能力の活用
3.ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の保護の理念の調和

この3つを重視して、各人の個別の状況に応じた柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度を利用者に提供することです。

「自己決定の尊重」は、本人でも申立することは可能です。
「残存能力の活用」は、日常の買い物程度は、認めるようになっています。また、後見を除いては代理権を選択することができます。自分でできることは自分で行えます。

たしかに、禁治産者・準禁治産者の旧制度に比べれば、柔軟にはなりました。

しかしながら、制度ができて15年経過しましたが、まだまだ浸透していません。制度の普及が今後の課題です。

4)成年後見制度の社会的背景

2000年に成年後見制度は制定されましたが、それは社会的な背景とニーズがあってこそのものです。
その社会的背景とは、

1.高齢社会への対応と準備

ご存知のとおり、急速な少子高齢化が進行しており、認知症ならびに1人暮らしの高齢者の増加する中での対応が必要なためです。

また、成年後見制度と同時に介護保険制度も導入されました。

要介護状態になった時に介護サービスを利用するためには、要介護認定の申請と介護サービス契約の締結が必要ですが、判断能力が不十分な方は、自分で手続ができないケースもあります。

判断能力が不十分な本人が介護サービスを利用できるようにするためにも、法的整備が必要となります。

したがって、介護保険制度と成年後見制度は車の両輪であるともいわれています。

2.障がい者福祉の充実

近年、わが国において、ノーマライゼーションの理念が各種施策の中で推進されており、障がい者基本法の改正、障がい者プランの策定など障がい者福祉の充実が政府の重要な位置付けとなっています。

ここでいうノーマライゼーションとは、「障がいのある人も家庭や地域で通常の生活をできるような社会をつくる」という理念です。北欧諸国で提言されましたが、現在は、国際的に定着した社会福祉の理念です。

3.諸外国における成年後見立法の動向

欧米諸国において、成年後見制度の改正のための法改正が進めらています。フランス、カナダ、オーストリア、ドイツなどでいち早く民法改正が行われ、成年後見制度を導入していました。

これらの国々での民法改正は、いずれも自己決定の尊重、ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の本人保護の理念との調和をめざし、柔軟かつ弾力的な利用しやすい制度を構築しようとしています。

日本でもこの国際的な流れに沿って、2000年に民法を改正し、「成年後見制度」が誕生しました。

5)成年後見制度に対する意識の変化とは

東日本大震災を通じて、いつ亡くなってもおかしくないという現実に直面したことで、成年後見制度に対する意識も変化しました。

将来、認知症になったとき、財産管理等を誰にまかせるべきなのかといったことを考える方も増えたと思います。

任意後見制度を活用し、見守りから財産管理、身上監護を任意後見契約締結により、信頼できる家族や専門家にまかせることもできます。また現在、認知症等で判断能力が低下されている方に対してのフォローをどうするべきなのかも改めて考えるきっかけになったと思います。

法定後見制度を活用し、適切な後見人・保佐人・補助人を選任されることで、安心です。

成年後見制度のことをよくご存じない方もいらっしゃいますが、ぜひとも有効活用していただきたいと思います。

6)登記事項証明書とは

登記事項証明書とは、後見登記等ファイルに記録されている登記事項を証明した書類です。法定後見・任意後見の内容が記載されています。したがって、代理権が付与されていることを役所や金融機関等に証明する場合に使用します。なお、登記事項証明書はプライバシー保護のため、交付を請求できる人が限られています。

請求できるのは、本人・成年後見人等・成年後見監督人等・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人などです。ちなみに1通あたり1,000円の交付手数料がかかります。

7)閉鎖登記事項証明書とは

法定後見・任意後見の内容が記載されていますが、終了の登記がされた場合には、その登記記録は閉鎖されます。

閉鎖登記事項証明書とは、登記官が閉鎖登記ファイルに記録されている登記事項を証明した書類です。

なお、登記事項証明書は交付を請求できる人が限られています。記録されている者以外で請求できるのは、本人の相続人・国または地方公共団体の職員等です。ちなみに1通あたり1,000円の交付手数料がかかります。

8)登記されていないことの証明書とは

登記されていないことの証明書とは、成年被後見人または被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人する記録がないことを証明する公文書です。

今では、各種許認可申請や後見・保佐・補助開始の申立の際の添付書類として使用されるケースが多いです。

証明書発行窓口は、東京法務局を始めとした各地方法務局です。ご本人が来庁するときは、本人が確認できる運転免許証等の提示が必要です。また、配偶者や四親等内の親族の方が請求されるときは、その関係が分かる戸籍抄本等が必要です。代理人が請求するときは、委任状も必要になります。

ちなみに私も代理人として請求することが非常に多いです。郵送でも請求できます。郵送の場合は、東京法務局へ請求することになります。

ちなみに1通あたり300円の交付手数料がかかります。